呼び出したくせに、と皮肉を込めたような喋り方で椅子の背もたれに体重を預けた春海。
視界に映っているはずの夫婦は、極度の緊張によって酷く霞んでしまう。というよりは私の全身の機能が上手く活動していないのかもしれない。
バクバクと尋常じゃないほどの高鳴りを見せる心臓に、やはり私の命日は今日だと激しく思う。
なんて思っている内に、頭は追い付かないが体は私の脚に「早く立て」と指示を送っていた。
普通は脳から指令が出るはずなのに、うん。どう考えても今日の私は正常ではないらしい。
勢い良く立ちすぎたせいで膝を机にぶつけたが、痛がる余裕もなく私は頭を下げた。
「こ、こんにちは…!」
「やあ、こんにちは。」
「初めまして菫ちゃん。」
先に挨拶を返してくれたのが、きっと春海のお父さんだろう。
多分春海が年をとったら、こんな感じになるんだろうなと思った。春海の父親だけあって、綺麗な顔をしていた。


