そう言って少しずつ進み出した車の流れに乗ってゆるくアクセルを踏む春海に、どうして?と問い掛けてみる。
直ぐに分かんないのか鈍いなお前、みたいな視線を向けられたけど理不尽だ。分からないに決まってるじゃないか。
春海のご両親なら、仲良くなりたいと思うのが当たり前だろうと口を尖らせた私。
春海は、何故か意地悪くニヤリと口角を引き上げて見せると。涼しい顔のまま言の葉を紡ぐ。
「俺以外の野郎と仲良くなる必要なんて、ねーだろ?」
「…野郎、て…。お父さんじゃん。」
「男って部類に入るからダメ。」
「(独占欲高いなー…。)」
次第にスムーズに動き始めた車の流れに、春海も上機嫌にアクセルを踏み込んだ。
流れていく外の街並みを窓から眺めながら、何故かその独占欲に頬が緩んだことは内緒。
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暫くして、車が停車したのは都内でも有名な高級ホテルの駐車場だった。


