囚われジョーカー【完】




数10分、車の多い大通りを走っていたが。春海が盛大に舌打ちをしたことでチラリと視線を運転席へ座る彼へと視線を移した。


ハンドルを掴む右手の人差し指でトントンと苛立ったように叩く春海に私は控えめに声をかける。



「…渋滞、ですね。」

「何で朝っぱらからこんなに混んでんだよ。だりー。」


今度は大きな溜め息を吐き出した春海は、シートへと背を預け目を瞑った。

車が動き出す気配はないし、動き出したら私が教えればいいかと放っておいた。



―――マンションを出て数分で、見事に渋滞へとひっかかってしまった私達が乗る車。


目的地となっているらしい待ち合わせの場所には大通りからしか向かえないらしく。先程から幾度となく聞こえる舌打ちと溜め息に、春海の苛つきが窺える。



少しづつしか動かない車の列に、私まで苛々と焦りが募る。春海が隣で舌打ちばっかするから、私にまでうつったじゃないか。