見る見る内に頬を真っ赤に染めていく私を見るなり、春海は愉しげに口角を引き上げた。


月明かりに照らされたその微笑を浮かべる姿は春海の妖艶さを最大限に引き出していて、あまりの刺激にぶっ倒れそうになってしまった。



こんな、危ない男に私は心も身体もすべて奪われているんだから。


情けないくらい何故か泣きたくなって、私から春海の腕の中にすり寄った。



「今日は随分、可愛いコトしてくれんだな。」

「……よろけただけです。」

「はいはい。」

「(…悔しい、ほんとに。)」



きゅっと春海の背中に腕を回して抱き締めれば、春海も返してくれるように私の腰に腕を回してくれた。


その温かさと、鼻腔をくすぐるシトラスの香りにやはり煙草の香りが恋しくなった。




春海、と言えば。


出逢ったときからシトラスの香水に混ざる濃い煙草のイメージが根付いてしまっている。

このイメージを変えることは皆無。