《side菫》
「はい、菫ちゃんこれお願いね!」
「分かりました。」
先にリビングに戻った私と麻乃さん。
麻乃さんから渡されたのは小さい円錐の筒のようなもの。
せーの、の合図でそれの下から出ている紐を引っ張れと言われた。
――――そう、今日のサプライズには欠かせないとも言える(らしい)クラッカーである。
廊下を歩く足音が聞こえ、それは段々とこちらに近付いてきてリビングに繋がるドアの前で止まった。
開けるよー、と語尾をのばすような和也さんの声が聞こえガチャリとドアノブが下がったと同時。
麻乃さんははにかみ「せーの」と合図をした。
パーン!
「ハッピーバースデー、和也!」
「お誕生日おめでとう、春海。」
目の前をカラフルなそれがひらりと舞い落ちていく。
その先に見える和也さんの表情は、最初からこのことに気付いていたらしく。にこにこしながら「ありがとー」なんて。


