「何してんの。」
「…、」
「すみれー?」
「…っ、えっと、…。」
あからさまにあたふたと焦りを見せる菫の頭を、優しく撫でてやれば。その瞳がゆるりと上目で俺を見上げた。
理性を酷く揺すぶるその仕草一つ一つに、俺は必死で耐える。
畜生、和也達の前じゃキスもできない。
その思いを今は隠すよう代わりに、菫の柔らかい髪を指に巻きつけて、それにキスを落とした。
「ッ、」
「…ただいま、菫。」
ふ、と笑って見せた俺に菫は顔を真っ赤にしながら「お帰りなさい」と呟いた。
その姿が愛しすぎて、また理性の危うさを感じた。
「はい、そこ!イチャつかないで早く中に入ってくださーい。」
「…邪魔すんなよ麻乃。」
チッと舌打ちをしながらがしがしと髪を乱す俺のスーツの裾がくん、と引っ張られる。


