去年の誕生日に父親から貰ったどっかのブランドの腕時計で時刻を確認すれば、もう後数分で午後の9時を過ぎる頃だった。
早く菫のところに帰りたいと言うのに、麻乃も一体何の用だって言うんだ。
重たく盛大な溜め息を吐き出しつつ、和也に続くように部屋を目指す俺達の間は無言。
まあそれもそうか。いくら双子の兄弟だって言ってもお互いに20を過ぎた歴とした成人男性。
野郎2人がベラベラ仲よさげに喋ってる姿は想像できない。つか、想像したくもない。
「なあ、和也。マジで何の用なわけ。」
「んー、俺は大体っつか確信に近いかな。予想つくけどなー。」
「…分かんねーし。」
「お前って、自分のことに関して鈍かったりするよなあ。」
呆れたと言わんばかりの嘲笑を浮かべた和也に苛っと腹が立ったが、そこは理性で堪える。


