《side 春海》
「何でお前んちに俺が行かなきゃなんないわけ。」
「まあ、そう言うなよー。」
「……チッ。」
聞こえるように舌打ちをしてやり、ついでに溜め息も盛大に吐き出してやった。
―――仕事が終わった俺は、いつも通り菫が待っているであろうマンションに帰ろうとしていたのだが。
和也に腕を掴まれて無理矢理車に乗せられ、最早拉致並の荒々しさに一発頭を殴ってやった。
菫が待っていると思ったら、早く会いたくて会いたくて仕方ないと言うのに。
苛々が募っていく中、連れてこられたのは何故か和也のマンションだった。
は?と間抜けな声を出し首を傾げた俺。和也は振り向き様に悪戯に笑うと。
「麻乃に、お前も連れて帰れって言われたから。」
そう言ってさっさとマンションの中へと歩き出す和也の後を渋々ながらも追った。


