囚われジョーカー【完】




あっと言う間にその長い足で私の隣へ並んだ三浦さんは、するりと速やかな動作で自身の指を私のそれと絡めた。


ドクン、跳ねる心臓に気付かれまいと小さく深呼吸。



はーっと隣から息を吐き出す音がして、チラリと見上げてみれば彼方も私を横目に見下ろしていた。


流し目がここまで妖艶と思わせる異性がいるものなのか、とついつい見惚れてしまう。



三浦さんは緩く微笑むとその視線を前に戻し。私の手を引いて再び歩き始めた。


数分歩き、後もう5分でマンションが見えるという頃。不意に三浦さんが歩みを止めた。


こてん、と首を傾げて見せた私に三浦さんは一度視線で空を仰ぐと。




「…菫、俺の名前、呼んでみて。」

「……三浦さん?」

「違う。名字じゃなくてさー…」

「……。」

「……。」

「………春海、さん…?」

「゙さん゙いらない。」

「……春海、」