数秒の沈黙を置いて、チラリと上目で三浦さんを見上げれば。その頬がほんのりと照れた色を孕ましていたから、つい頬が緩んでしまう。
私が笑っている理由に三浦さん自身気付いたのか、直ぐに視線は逸らされてしまった。
自分の手を、三浦さんの大きな手に遠慮気味に重ねれば。焦れったいと言わんばかりに指と指を絡ませ強く握られた。
痛くない程度、だが決して離れないように。
「…三浦さん、帰りましょうか。」
「ん。…あのさ、菫。」
「はい?」
「好きだ。」
「……、」
うっかりしてたら聞き逃してしまいそうなほど短いその言葉だったが、私の耳には確かに届いた。
パチパチと瞬きを繰り返す私の心臓の鼓動は、みるみるうちにスピードを上げていく。
じ、とただ私を見下ろす三浦さん。
不意打ちのそれが何だか悔しくて、私は睨み上げながら文句をたれる。


