「…三浦さん、あの…」
「うん。」
「……おかえり、って…?」
さっきは反射的に「ただいま」と返したが、こんなこと今まで一度だって言われたことがないから正直驚いた。
こっぱずかし気持ちも入り交じり、視線を泳がす私の耳に届いたのはさらに驚く三浦さんの楽しげな声。
「お前、あのアパート引っ越せ。」
「は…?」
「で、俺の部屋に一緒に住もう。」
「…今、な、んて…」
耳を疑う必要なんてないのかもしれないけど、もう一度問い返さずにはいられなかった。
だって、こんなの、幸せすぎるもの。
だから、と少し頬を朱色に染めた三浦さんは真っ直ぐに私を見据えて言う。
「単刀直入に言えば、菫が大学卒業したら。」
「…。」
「結婚しようってこと、なんだけど。」
「………三浦さん。」
後頭部に手を回し恥ずかしそうに視線を一瞬逸らした三浦さんの名前を呼ぶ。


