ぽつぽつと灯る家々の光に、早く私も部屋に帰って軽く何か食べてお風呂に入ってベッドにダイブしたいて思う。
閑静な路地に響く一人の足音は、寂しく感じてしまって嫌いだ。
と。
当たり前なのだが突拍子もなく鳴るけたたましい音楽に肩をビクッと上げた。
音の発信源は私のバッグからで。バイブで震えるそれは着信の長さ的に電話を知らせている。
ディスプレイを確認し。表示されている名前に自然と頬に熱が集まってしまう。
通話ボタンを押し、二つ折りのそれを耳に押し当てた。
「はい。」
“バイト、終わったの。”
「はい。今、帰ってます。」
“何処に?”
……何処に?
電話の相手、三浦さんに問われた言葉は理解出来ないもので。私は足を止めて眉間に皺を作っていた。


