麻乃さんはドアの向こうに消えかけた体をくるりと翻し、微笑むと。
「結婚式、呼ぶから来てね!」
そう嬉しそうな声を残して仕事に戻って行った。初めて会ったときに感じた雰囲気とは違うが、カズヤさんが麻乃さんを選ぶ理由は女の私でも分かる。
三浦さんは、どうして私を好きになったんだろう―――?
まあ、それは今度聞いてみよう。とは言っても三浦さんのことだから、曖昧に濁されそうだな。
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バイトが終わり。着替えを済ませスタッフルームを後にした私は、一人帰路を辿っていた。
もう暦上では春の筈なのに、肌を撫でる風にはまだ冷たさが孕んでいる。
手袋もマフラーも防寒具を装着していない私には結構痛く、朝必要ないなんて思った自分に溜め息がもれた。
明日は大学も休みでバイトも休みだから、1日部屋でゆっくり出来るはず。


