カラン、カウベルの音が耳に届き。店内を確認してみればもう明日香さんと麻乃さんしかお客さんは居なくなっていた。
横を通り過ぎたおじさんが、銀のトレーに二つのカップをのせ。嬉しそうな笑顔を浮かべている。
多分、自分のカフェラテを誉められたのが嬉しかったんだろう。
と。
「なあ、篠宮…」
「ん?」
コソッと私の耳に自分の口を近付けるよう、身を屈めた清水くん。
チラリ、麻乃さんを瞳に映すと微細に眉を寄せ。
「あのさ、もしかして三浦さんって……」
「…。」
「三浦グループの、三浦春海って人?」
「………うん。」
小さく頷いて返せば、清水くんは目を大きく見開いて口をパクパクとさせていた。
首を傾げて見せた私に清水くんは自嘲的な掠れた笑いを「はは、」とこぼした。


