そこが彼の優しさでもあり強さなんだと、改めて感じた。
私も控えめにだが微笑み返し、丁度来店したお客さんのオーダーへと向かった。
店内に残るお客さんも2組ほどになり、休憩とばかりに息を吐き出した私の耳に届くカウベルの音と高揚した女性のハスキーボイス。
「わ!久しぶりー!」
「え、あ、明日香ーっ!」
ハスキーボイスは直ぐに明日香さんだと分かったが、次いで響いた高揚した声にも何だか聞き覚えがあって。
もしかして、と勢い良く顔を上げて見れば。
ああ、やはりという感じだった。
ふわり、と笑う柔和な微笑みには女でも見惚れるものがある。
と。
バチリ、その大きな目と私の目が合う。
「菫ちゃん!」
「あ、はい、…どうも。」
キャッキャと子供のようにはしゃぎながら私へと駆け寄ってくるのは、昨日振りの麻乃さんだった。


