問題なのは、三浦さんが今にも私の耳朶にぶっ刺そうとしているソレである。
「み、うらさ…!」
「何ー。」
「現代には、ピアッサーという専用器具が…」
「金の無駄。」
「ソレは駄目!ソレは…ッ、」
若干涙目になりながら、中断を懇願する私に三浦さんはニヤリ、意地悪く微笑を浮かべ。
「だーいじょぶ。」
「ッ、」
何に確信を持ってそう言っているのかは解らないが、どうせ三浦さんのことだ。今のこの状態を楽しんでいるんだろう。
なんて酷い。
もう意を決してしまうしかない。ぐっと瞼を下ろした私は、視界から外の世界を遮断した。
そして、痛みに備えて深呼吸を繰り返す。
三浦さんが持っていたソレとは――――刺繍針。
裁縫箱から取り出して来てからの第一声が「Sの血が騒ぐ」だ。何だそれ。


