自分が一番傷付いているなんて、悲劇のヒロインぶって泣いて喚いて逃げて。
三浦さんの話なんてまともに聞こうとしなかった。
もしかしたら、三浦さんは私が聞けば全部とはいかなくも名前くらいは教えてくれたかもしれないのに。
抱き締められている為、至近距離で感じる三浦さんの熱。
鼻腔をくすぐるシトラスと煙草のそれに、全身が疼く。その疼きがもどかしいようで愛しい、なんて私は重傷だろうか。
と。
太股を優しく撫でるようにスカートの中へと進んでくる手に、びくりと肩が跳ね上がった。
それを見た三浦さんはニヤリと意地悪く口元に弧を描く。その姿さえも妖艶で見惚れてしまう。
「ちょ、駄目ですよ…!」
「…なんで。」
拒否されたことに不満げな視線を向けてくる三浦さんに、私は口ごもりながらも呟く。
「まだ、私の方がハッキリしてないから―――。」


