煙草の香りと混ざったせいかそれは一層深まって鼻孔をくすぐるから、逃げるように助手席のウインドーを下げた。
寒ぃ、と呟く三浦さんに冬ですからねと尤もなことを返す私。恨めしそうな右側からの視線は無視しておこう。
「三浦さん、一度私のアパートに寄って下さい。」
そう言った私に三浦さんはしれっとした物言いでなんで?と問うて来た。
なんで、とは。この人ば準備゙という言葉を知らないんだろうか。
「服、取りに行きたいんです。」
「ふーん。」
終始興味なさげな三浦さんの声色に苛立ったのは言うまでもない。気分屋にも程があると思う。


