「ずっとこの体勢はキツいので、上がって下さい。」
「…。」
「三浦さん?」
「…チッ。分かったよ。」
何故舌打ち?ふざけんな。怠惰な動きで靴を脱ぎ私を離した三浦さんを睨み上げたが、チラッと視線が交わるだけでスルーされた。
先にリビングへと続く短い廊下を歩く後ろ姿を、数メートル後ろからゆっくり着いて行く。
そのまま三浦さんは我が物顔でソファーへと深く腰掛け煙草を吸い始める。
それを横目に、私はキッチンで珈琲でも飲もうと準備を始めたのだが。
「菫。」
「…なんですか。」
「コッチ、来て。」
「珈琲…」
「来て。」
「……はあ。」
聞こえるように溜め息を吐き出してやり、ムスッと不機嫌さを広げた顔で三浦さんの座るソファーへと歩み寄る。
そんな私を見上げる三浦さんは相変わらずの無表情。何を考えてるか分からないから、怖い。


