暫くして離れた唇。
息を吸えば、肺に新鮮な空気が取り込まれるのが分かる。それが自身の生を感じることが出来て。不思議な感じだ。
「あー…、菫だ。」
「…キスする意味が分かりません。」
意味分からないことを呟きまた私を腕の中に閉じこめた三浦さん。
彼から香るシトラスと濃い煙草の匂いは現実味がありすぎて、でもそれが落ち着いてホッと息を吐く。
「急に訪ねて来て、キスなんてして、アサノさんに悪いと思わないんですか。」
「思うかよ。」
「…最っ低ですね。」
「それでもいい。つか、俺が麻乃に遠慮する理由なんかない。」
三浦さんが飄々と口にした言葉に、私は動きをピタリと止める。
遠慮する理由がない、そう言ったのかこの人。
何て最低な人だ、最低すぎて私の涙腺が緩んできたじゃないか。むかむかとする胸の内を小さく呼吸を繰り返すことで抑える。


