ふわり、私を包む熱は外気に曝されたことで酷く冷たい。
耳元に寄せられた唇が微かに動く。
「…菫、」
もう、携帯越しでもドア越しでもない。直接私の鼓膜を叩くロートーン。
キツく私を閉じ込める腕は、中々離してくれそうにない。
「菫がいねえと、仕事もろくに手が着かねえよ。」
「…ッ…、」
「俺から逃げんな。」
言葉の拘束と身体の拘束は、この人の得意技だ。そのまま心まで奪ってしまうのだから。
堪えていたものなんて、いとも簡単に崩壊して頬を濡らす。
それはそのまま三浦さんのスーツに染み込んでいく。嗚呼もう、泣くな私、情けないじゃないか。
あれだけ開けないと言っていたのに、結局は三浦さんを求める気持ちには嘘つけず開けてしまったし。
その面でも恥ずかしいと言うのに。


