「初めから、分かってたんです。三浦さんと私の住む世界は違うってことくらい。」
分かってた、分かってたけど。結局こんな別れをしないといけなくなるまで私は三浦さんの傍を離れることが出来なかった。
それは何故?
そんなん、答えなんか一つしかないだろう。
《三浦さんが好きだから》だ。
一枚の鉄製のドアの向こうに、好きな人がいる。そう思ったら胸が痛む。ずくずくと、転けて傷をつくった時のように疼く。
期待ばかり持たして、いつもいつも狡いんだ三浦さんは。
コン、軽くドアに何かが当たる音。その後に次いで、三浦さんのロートーンで甘い声色が私の名を紡ぐ。
「…何でしょう。」
「住む世界なんて、どうでもいいんだよ。菫、ここ開けて。」
「どうでもよくなんか…」
「それを気にしてたら、俺はここには来ない。」


