金持ちめ、と。舌打ちしたい気持ちは山々だけどそれは過ぎゆく外の景色に意識を持って行くことで紛らわせた。
「なあ、菫。」
「はい。」
三浦さんは、顔は前を向いたままで私を呼びかける。それにゆるりと視線を動かせば端正な横顔が視界を独占し妙に腹立たしい。
私がそんなことを考えてるなんて知るはずもない三浦さん。あー、困ったような声を出す彼は珍しく歯切れが悪い。
何だ何だと次に紡がれる言葉を待つ私の耳に届いたのは、
「腹減った。」
「……。」
…で、何だと言うんだ。
私は運転席に座る男を冷めた目で横目に見上げる。最早何が言いたいのか分からない。


