やっと浮かべることが出来たのは自嘲的なそれ。口角だって引きつっていて、とても上手とは言えないが私にしたら頑張った。
素直に泣くということを、私のちんけなプライドが許さない。
「眉間にしわ作ってまで、涙って流さないものなの?」
「…これが、私の今するべきことなんです。」
「……そんなん、」
――――哀しすぎるよ。
呟いた、優しい明日香さんの悲痛の声は突如吹いた肌を刺すような冷たい風と街の喧騒さがかき消した。
酷く、胸に響く。
でもその優しさに甘えることはしない。
明日香さん、ありがとうございます。でもごめんなさい。
恋を諦める必要はないと言ってくれた時、すごく嬉しかった。三浦さんの傍にいてもいいと誰かに認められたようで、心が軽くなった。
明日香さん、そんな哀しい顔しないで下さい。
罪悪感や劣等感や入り乱れた感情に負けたのは、私なんだから。


