囚われジョーカー【完】




「……面白くなかったら、無理に笑わないでもいいんだよ?」

「…え?」


明日香さんは、困ったように片眉を上げ小さく笑った。私は浅くなる呼吸に気づかぬふりで、明日香さんを見つめる。




「菫ちゃん、例のあの人と何かあったんでしょう?」

「……ど、して…」

「顔。見れば分かるよ。」


そう言い私の頭を優しく撫でてくれる明日香さん。やばい、その突然の優しさには慣れてない。涙腺が刺激され、堪えようと唇を噛み締める。


なんだ、明日香さんは初めっから気付いていたのか。




――――私の、作り笑いに。


確かに楽しい時間だったし、明るい明日香さんと陵一さんの会話は面白かった。明日香さんに鬼絡みされて騒ぐ清水くんを見てると、気持ちが和んだ。



でもやっぱりそれは、一時のものでしかなくて。


こうして静かな場になれば頭の中を占領するのは三浦さんなのだ。