―――その後
陵一さんと明日香さんの仲の良い夫婦漫才みたいな会話で笑い、最後は乗り気の明日香さんが熱い抱擁を陵一さんへ送り終了。
その時の陵一さんが明らかに頬を真っ赤に染めて慌てふためいていたから、何だか可愛かった。
――――――――…
「…あ、電話だ。」
陵一さんのお店を後にし、そんな声に足を止めたのは数10メートル歩いてからだった。
その声は斜め数歩後ろを歩いていた清水くんで。彼は少し私達から距離をとった場所で電話に出た。
隣を歩く明日香さんは頭上に広がる大きく真っ黒のキャンバスに向かって腕を突き出し伸びをしている。
私は、というと。
その横で静かに清水くんが帰ってくるのを待つ。チラチラ、明日香さんの顔色を伺いながらだが。
と。
「…ねえ、菫ちゃん。」
「!…はい?」
急に名前を呼ばれたから大袈裟に体をビクつかせて返事を返す。


