(3chapter 1.5)
…煙草が吸いたい。
そう思い隣で眠る小さな彼女を起こさないよう、俺はリビングへ向かう。ソファーに腰掛け、それをジーンズのポケットから取り出し一本くわえる。
火をつけ、そのままジッポを弄って遊ぶ。特に愉しくもないが最早これは癖だ。
「(…どーしようか。)」
そんなことを考え目を瞑った瞬間、テーブルに置きっぱなしにしていた携帯のライトが点滅した。
手に取り、怠惰な動きでそれを開けば。何だ、自称・香水マニアのアイツだった。
「もしもし。」
“あ、こんばんはー。麻乃です。”
「ああ、分かってるし。」
ソファーに前屈みで浅く座り直し、煙草の灰を灰皿に落とす。
あ、次ので煙草ラストじゃん。買いに行こうかなやっぱヤメタ怠い。
電話の向こうからは、柔らかいがはきはきとした声が鼓膜に響く。


