「…菫、起きたのか?」
「(寝たふりだ、私!)」
「……寝てんの。」
「(寝たふり、寝たふり…)」
フローリングをゆったりと歩く足音が近付いてきて、ギシリとベッドがなく。
それと共にお腹の辺りのシーツが沈み、ジッポの音、そして濃い紫煙が香った。
うっすらと瞼を持ち上げてみれば、三浦さんは私に背を向けるようにベッドの縁に腰掛けて煙草を吸っていた。
と。
いきなり振り返るから私は目を閉じることが出来なかった。
三浦さんは無表情で煙草を指に挟むと、私を見下ろす。狸寝入りだとバレてしまっただろうか。
「やっぱ起きてた。」
「……バレてましたか。」
「バレバレ。」
「………。」
やばいな、どうしよう。
三浦さんの電話を盗み聞きしていたことも気付かれてしまってるかと心配したが、何も言われないからそれに関してはセーフだったらしい。


