盛大に溜め息を吐き出す音に続いて、ジッポをカチカチと徐に弄る音。
まだ耳に消えることのない余韻として残る三浦さんの声。
「(…アサノ、て…?)」
男ではないだろう。とすれば選択肢は女ということになる。
―――でけー声で名前呼ぶんじゃねえよ。
嗚呼、きっと電話の相手ばあの女の人゙だろう。だって「三浦さん!」と大きな声で名を呼んでいたもの。
「…、」
信じてみようか、なんて思えばこれか。何て滑稽なんだ。
ずるりずるり、私はドアつたいに冷たいフローリングの上へ尻餅をついた。
ガタン、何かに当たってしまい閑静な室内にその音は盛大に響いた。
「…すみれ?」
「っ…、」
ドア越しに、三浦さんの警戒心を孕む声が聞こえて私は咄嗟にベッドへと駆け込んだ。
私が布団に潜ると同時、寝室のドアが開き人の気配を感じる。


