囚われジョーカー【完】





私の顔を覗き込む三浦さんに、大丈夫ですと平然を装ってはみたものの。不審がられてしまう。当然だ。


その痛い視線から逃げるよう、エレベーターに乗り込む。



三浦さんも私に続いて乗り込み扉は閉まり、エレベーターは上昇を始めた。


シン、とする箱の中は息苦しい。酸素を求めて息を吸い込むがもっと苦しくなってやめた。





「……なあ、菫。」

「、」

「俺の香水って、匂いキツイ?」

「…さあ。」



曖昧に誤魔化してはみたが、三浦さんからは濃いシトラスの香りがする。


私には、香水よりそれと混じる煙草の香りの方がキツイと思いますけどね。まあ、それはあえて言わなかった。




「んー…。」

「どうかしたんですか。」

「いや、な。会社の子が香水にやたら詳しくて俺のやつ言い当ててきたから。」


そんなに匂うのかなって、と呟き小さく笑った三浦さんの顔を、私は数時間前にも見た。