「なあ、菫。」
「…なんでしょう。」
「お前、大学卒業してからやりたいことあるの?」
「いきなりですね。」
三浦さんからの質問はいつだって急だ。今までそんなこと聞いてきたことないくせに、将来を知りたがるのか。
「…まだよく分かりません。」
「でもあと数ヶ月で卒業じゃんか。」
「そうですね。どこかの会社に勤めるんじゃないですか?」
「曖昧っつか、適当だなおい。」
呆れたような困ったような声でそう言い小さく笑う三浦さんをチラッと見、直ぐに視線は前へと戻す。
夕日は濃い藍を被ると月へとバトンタッチし、明日の朝へと備え眠りにつく。
そんな中、車は滑らかな動きで車道を走る。
将来の夢がない私は、そこから会話を広げていくこともそれをする話術も備わっていない。
重たい沈黙が、2人を包むばかりで気まずさの溝は深まる。


