「…あの、変なこと聞くんですが。」
「はい?」
「ピアス、開けるときって痛かったですか?」
店員さんは少し驚いた顔をしたが、直ぐに笑みを浮かべて「そうですね」と呟いた。
「僕は、高校生の時には開けていたのであまり覚えていないのですが。はい、痛かった気がします。」
「…それは、何かを忘れられるほどに、ですか?」
「……、」
店員さんの顔が、困ったように歪められ。馬鹿なことを聞いてしまったと激しく後悔した。
何てことを聞いてるんだろうか私。初対面の人に向かってだし、病んでる痛い女だと思われても無理はないだろう。
激しく舌打ちしたい衝動にかられたが、我慢する。今してしまえば店員さんに対してのようで気分を害してしまうかもしれないし。
「―――お客様。」
「、」
「忘れたいと強く思うことほど案外、自分の一番忘れたくない思いだったりするんですよ。」


