歩みを進めて遠ざかっていく二人を目で追ってしまう。不思議と、私の足は糸が切れたように動き出しさっき彼女が立ち止まっていたお店の前まで来ていた。
ドアをくぐり、立ち入ったのは香水ショップ。様々なフレグランスが並ぶ店内をぐるりと見回し彼女が指さしていたガラス戸にある青い瓶を手に取った。
どれだけ視力良いんだ、私。こんな時見えたって何も嬉しくない。
蓋を開け、シュッとワンプッシュ手首に吹きかけた。
ふわり、香ったのはシトラス。
いつもは、濃い煙草の香りに混ざってしまいその存在感を薄くしているけど。あの人の、三浦さんの香りとして纏われているシトラス。
この香水、三浦さんのものと同じ物だ―――。
よく分かったね、そう言って愉しそうに笑っていだ彼女の゙三浦さん。
私だって、貴方の香水の香りくらい嫌ってほどに分かる。


