瞬間、なぜか私は冷静すぎるほどの落ち着きを取り戻していった。肩を並べ、仲良さげに歩く二人を客観的に捉えている。
彼女の傍にいる゙三浦さん゙は、とても穏やかな笑みを浮かべている。私だって、三浦さんに優しく笑いかけられたことはあるけど、チガウ。
彼女への微笑みは、愛だ。私には決して向けられないもの。
……なんだ、私が三浦さんの口からたった二文字が聞けない理由はこんな所にあったのか。
今、車道には車は走っていない。私と、あの二人の空間だけ切り取り孤立したように、会話は私の耳へと届いた。
「この香水、――さんの付けてるものと一緒じゃないですか?」
「あー、マジだ。よく分かるね。」
「はい。香りマニアなんですよ私。」
一部分、上手く聞き取れなかったけれど。そんなのどうだっていい。
私と会うときと髪型が違う三浦さん。無造作に遊ばせている髪型は、グレーのスーツにはあまり似合わない。


