ふわり、身体が宙に浮く。頭は一気に起こりすぎた出来事によってそれを理解するのは難しかった。
ただ、視界には白い天井と。三浦さんの端正な顔だけが見える。
ぎしり。
軋む音と共に、私の身体は硬いシーツの海へと沈んだ。
そこでようやく、現状を理解することが出来た。私は三浦さんに所謂゙お姫様だっごというやつで寝室のベッドまで運ばれたのだろう。
深夜、静まり返った室内には私と三浦さんの静かな呼吸の音とベッドのスプリングが軋む音だけが虚しく響く。
「……菫、」
「………。」
「菫、頼む。」
「……貴方は、最低です。」
眉を下げ、懇願と言うよりは少し荒っぽい口調だけど。こんな悲しげな顔は見たことがなかった。
ゆっくりと、私の上に跨る三浦さんの首に腕を回し顔を傾けながら近付ける。
微かにリップ音をたて、合わさった唇。こんなに切ない口付けを人生の中で誰かとするなんて思わなかった。


