「店員さーん。」
ぼーっと突っ立ち、そんなことを考えていた私の意識を引き戻すように。笑顔で片手をあげる優しげな姿に視線を移す。
スタスタとテーブルまで近寄り、決まった台詞を口にする。
「ご注文はお決まりですか。」
「コーヒーと、アイスティーで。」
「はい。以上でよろしいですか。」
「うん。」
「かしこまりました、少々お待ち下さい。」
マニュアル通りの言葉は当然ながら棒読み。
直そうとも思わない私にはやはり接客業は向いてないと思う。誰かお客さんが叔父さんに言ってくれたら辞める理由にもなるのに。
「菫ー、これ頼んだ。」
注文を取り、厨房のスタッフさんに伝票を渡した私の名を呼び。にっこりと笑う叔父さんを目を細くして睨み付けた。
「…自分でどーぞ。」
「叔父さん足が痛いの。店長命令。」
「職権乱用。」
「まあまあ、ほら、お客様のお待ちだよ?」


