「あんちゃん、大丈夫かい? ずいぶんうなされとったようだが?」
隣のじぃさんが声をかけてくる。

「あぁ、大丈夫だ。ほっといてくれ」

正直、かなり煩わしい。

じぃさんだって、俺と同じ運命のくせに、よく他人に構う気がおきるもんだ。
反対隣のおっさんは、当然声などかけてこない。

たとえかけてきたとしても、それは呻き声がうるさい、とかそういう類のことだろう。
それが普通だろう。


――こんな、監獄の中では。


悲鳴をあげるような夢など、今まで見たことがない。
今まで自分のやったことを後悔するなら、悲鳴をあげるどころか、眠ることだってできなくなるだろう。

だが、俺は今までの自分の行動は、全て納得ずくのつもりだ。

だから、夢でうなされた事など一度もなかった。


――だが、今回は特別のようだ。


やはり、こんな俺でも自分の命は惜しかったらしい。
この監獄に入ったとたんに夢で悲鳴をあげるようになるとは…。

今日が一日目。

ということは、あと十二日。

それが、俺の命の期限。