それは、いつもと同じ会話から始まった。
「レイ君、先ほどの話はどう思う?」
いつものように軽く流せば良かったのに、その時の俺は多少疲れていた。
受け流すのも面倒になり、軽く自分の意見を述べたんだ。
「ほう、そうか…。でもその点なら、私はこう思うのだが…」
再び返ってきたヤツの返答を、また受け流そうとして、ふと気づいた。

着眼点…いや、視点が違う?

それは、俺にとって興味深い発見だった。
その時、俺はとうとうヤツの気が済むまで、ヤツと会話…いや、議論をし続けた。

教育では、知識を一方的に詰め込まれるだけで、意見交換の場というものはない。
他人がどう考えているのか推し量ることはあっても、知ることはなかった。
もちろん、わざわざ知りたいという欲求も俺には無かったため、俺にとっては、教え込まれる知識や考えと、自分の考えだけが全てだった。

それが、同じ「事実」も、人によってまるで違うとらえ方ができるのだと、初めて気づいたのだ。