「ところでレイ君、先ほどの教育内容について君はどう思う?」
大抵教育が終わると、ヤツはこう言って話しかけてくる。

大体、この「レイ君」って呼び方も気にくわない。
「君」付けとはね、何様のつもりだ。

だがこいつは、他の誰に対しても「○○君」と呼んでいるから、俺に対してだけ特別という訳ではないらしい。
しかし、誰もヤツのことを「シュウ君」と呼ぶ者はいなかった。

ここに集まった連中にとって、名前など対して意味を為さない。
もともと付けられた名前を持っている者は少数だ。
ほとんどが、周りの人間が呼ぶのに不便だから適当に付けた呼び名か、自ら名乗るために自分で付けた呼び名を、名前としている。
俺だってそうだ。
俺を育ててくれたであろう人が呼んでいた名前は覚えていない。
だから、物心ついた時に自分でつけた。

何も持っていない……レイ、と。

だから、「君」など付けて呼ばれると、却って莫迦にされているように感じるのだ。
「私はね、こう思うのだけれどね。……」
ヤツが何か話し始めたが、俺は聞いちゃいなかった。

人の意見などどうでもいい。
いちいち気にしていられるか。

大人数での生活を余儀なくされていても、俺のその考えと態度は変わることはなかった。

…その時までは。