結局、俺は再婚の意志を覆すことは出来なかった。
俺は第一の任務に失敗したのだ。

残された手段は、彼らを殺すこと。

一番いいのは、二人同時に、事故に見せかけて殺すことだ。

だが、彼女にはいつも娘がつきまとっている。
娘を抜きにして殺すチャンスをうかがうのは難しかった。

そして、俺は失敗したのだ。

初めての…そして、最後の失敗。

一瞬の出来事なので、断片的にしか思い出せない。

俺が向けた銃口。
その先にいたのはあの男…!
彼女を手に入れる筈だったあの男。

男を殺すことに、俺はなんのためらいもなかった。
軽く指に力をこめれば、男は確実に死ぬ。

笑みさえ浮かべて、俺が指に力をこめた時…。

「やめて、やめてええっっっ!」

普段なら人の気配に敏感な俺も、殺しの瞬間には、そっちに気を取られていたらしかった。
気付いた時には、遅かった。

俺が引き金を引いた瞬間、俺とあの男の間には、娘が立ちはだかっていた。

弾丸は、綺麗に娘の頭部を貫通した。
そのまま、背後にいる男の心臓に命中する。

…俺は、ただ立ち尽くしていた。