仕事は大抵、国内で済むことが大半だ。
だが、時には他国に行くこともある。
偽造パスポートは山のように持っていた。
偽造、といっても、連中が用意するのだから、正規品だ。
ただ、俺の名前や住所や職種がさまざまなだけ。
仕事の内容に応じて、使い分けていた。

今回の仕事は、海外での、いわゆる殺しの方だった。

ある男と、娘を連れた女との再婚を阻止する、というのがメインの仕事。
それがうまく行かなかった時には、3人とも殺せ、というのがその内容だった。

娘は10歳。

さすがに、俺は娘の殺しは断りたかった。
子供を殺すのは、嫌だ。

連中の強固な態度を、俺は必死に説得し、何とか子供の命だけは奪わずに済むように交渉が成立した。

だが、一番いいのは、とりあえず結婚の意志を覆すこと。
それが出来れば、誰も殺さずに済む。

今まで身につけた教育の内容を総動員して、俺は今回の仕事に立ち向かっていった。