会社では、優秀なわりに病弱な人間であるというふれこみだった。
必要に応じて、病気を理由に会社を休むためだ。
入社はコネ入社だったので、何日休んでもクビになることはない。
それでも、働きやすい環境をつくるために、休む理由は持病の病気のため、ということにし、出社している時は真面目に働き、かなり優秀な社員。
人当たりも良く、人付き合いもいい。

それが、会社員としての俺。

表面上そつなくこなし、酒の席や誘いには極力参加する。
それだけで、人は俺を人付き合いのいい、感じのいいヤツだと思い、側に寄ってくる。
上辺だけの付き合いで、当たり障りのないことだけを言っていれば、優しくて頼りになるヤツだと思われる。

社会での人間関係など、築くのは簡単だった。

心を許す必要もない。

遊びの上で、
「友人です」
と紹介される違和感にも慣れた。

会社の中で、俺は友人が多い方だと思われていた。

社会では、こんな簡単なつき合いが、友達になるって事だったとは。

…俺にとって、本当の友人など、一人もいやしないのに。