一流企業の社員の生活は、贅沢なものだった。

住む場所は、連中が手配した。
社員寮とやらもあったのだが、連中が使いたい時に、俺が使えなければ困るからだ。
社員寮では、周りの目があるので、自由に動くことが難しくなる。

雨露をしのげる程度の家を予想していた俺は、最初ひどく驚いた。

高層マンションの一角。
一人住まいだというのに、部屋は3つもある。

…何に使うんだ?

トイレも、風呂も、何もかも整っている。
使い方の判らない電機製品も、一通りのものが揃っているようだ。
おまけにスーツなどの衣類まで用意されていた。

…ずいぶん投資したものだ。

最初は驚いたが、慣れてくると鼻で笑いたくなった。
一流企業の社員にふさわしい家として、連中が用意した住処だ。
金の使い方を間違っている。

だが、俺にとっては有難い話なので、黙ってそこに住むことにした。

一人きりで、自由に使える広い空間。
連中に監視はされているのかもしれないが、それはどうでも良かった。

別に、俺はプライバシーなど求めたりはしない。

安心して眠れる広い家。
清潔な衣類。
いつでも満腹に物を食べられる環境。

俺にとっては、天国にも等しい。