十三日間

気が付くと、そこは保健室だった。
そんなに長い時間気を失っていたわけではなかったようだけど、保健室に運ばれて、寝かされるくらいの時間はたっていたワケだ。

僕が目を開けると、側には秀悟が座って僕を見下ろしていた。
「お、気が付いたか?」
秀悟はそう言うと、僕の顔をのぞき込んだ。
「ん……」
おそるおそる秀悟の顔を見上げたが、いつも通りの秀悟だった。
秀悟は、ハンカチを僕に差し出す。
「中にネックレスが入ってる。これ、俺が持ってるのを見るのが何かヤバそうだったからさ。このまま受け取れよ」
…秀悟も、僕の異変に気付いているんだ。

「…俺が、原因か? なんか、こないだも…」

秀悟が顔を歪めて僕に聞く。
違う!
「違う、違うよ、秀悟…。うまく言えないんだけど…」
僕は一度言葉を切り、気を失う前の事を必死に思い出す。

フラッシュバック。

そんなワケないのに、僕は唐突にそう思った。
フラッシュバックなら、過去に一度体験してなくちゃいけない。でも、秀悟にネックレスを渡したのは初めてだ。
なのに、僕はそれを過去に経験している、とどうしても思ってしまうんだ。