学校に着く前に、途中の道で秀悟に逢った。
「おはよう」
「っす」
挨拶したまま、しばらく黙って並んで歩く…。
やっぱり、我慢できなくなったのは僕の方だった。
「何で昨日のこと、聞いてくれないんだよぉっ」
ふくれながらそう言うと、とたんに秀悟は笑い出した。
「あははは! 絶対おまえの方から話し出すと思ったからさ! 一昨日あんなに付き合ってやったんだ、カワイイ意地悪くらい、いいだろう?」
さらに笑いながら僕の顔をのぞき込み、足が止まる。
「伶…おまえ…」
襟首を捕まれる。
「な、な、なに?」
僕は怒られるのかと思って、びくっとしてしまった。
秀悟は、僕には当然手を出したりしないが、怒らせるとかなりコワイ人で有名なんだ。
ちなみに、腕っぷしの方もかなりたつ。
もうひとつ付け加えると、僕はそういうのは全然ダメ。
…僕の方が、普通なんだからね。

「これ、まさか昨日買ったのか?」
襟首を掴んで、秀悟は僕の胸元をのぞき込んでいたんだった。
「あ、あぁ」
なぁんだ、
それを見てたのか。

僕はホッとした反面、秀悟を驚かせたことに、内心やった!と小躍りしていた。

「ううん、僕が買ったんじゃないけどね」
へへへん、と得意そうに言うと、秀悟が横目で睨む。
「大木に買って貰ったってか? 何で初デートで女の子に買わせてるんだよ」
あきれた顔で秀悟が言う。

ふはははは、さすがの秀悟も、昨日の流れまでは想像つくまい!

僕はさらに得意顔になった。