十三日間

あたふたしたまま映画が始まってしまったので、結局僕は映画はほとんで観てなかった。
ちょくちょく横を盗み見して、大木みくるの横顔を観る。
映画の内容そっちのけで、さっきの告白を思い返す。

ほとんどっていうか、映画全然観てないじゃん、僕。

後で、大木みくると感想とか話して盛り上がる計画がパアになっちゃった…。
でも、いいや。
それどころじゃなかったもんね。

映画が終わって
「面白かったね~!」
と、楽しそうに話す大木みくるに、複雑な顔で頷いて見せて、昨日リサーチした店に自然に向かう。
「昼飯、ここの店でいいかな?」
と、店につくと、昨日と違って何組か待ってる人達がいた。
「あ、ここ知ってる! 来てみたかったんだ」
大木みくるがはしゃいだ声で言ってくれたので、僕らも列に並ぶことにした。

「でも、まさか水瀬くんがOKしてくれるなんて、ホントに思わなかったよ~」

10分ちょいで店に入れたので、席に着き、ランチセットを無難に頼んだ後、唐突に大木みくるがそう言った。
水を飲みかけてた僕は、むせてしまった。
「大丈夫?」
心配そうにのぞき込む大木みくる。

この子が、僕の彼女かぁ……。
彼女……。
えへへ。

だめだ、にやけちゃうや。

「大丈夫。…でも、僕がOKしなかったら、あの後どうするつもりだったの?」
僕は一日気まずくなるのが怖くて、最後に告白しようと思ってたのに。

「映画なら、泣いてても判らないかな、と思って。そんで、一日だけ付き合って遊んでもらって、思い出にしようかなって思ってたの」
…女の子って、意外にたくましいのかな。
でも、そんな風に思ってくれてたんだ…。

僕は、ちょっとじ~んとしてきちゃった。

僕の方が、よっぽど意気地がない。

「でも、水瀬くんがOKしてくれたから、ホントに嬉しかった」
大木みくるは、もう一度そう言った。

ところで。