私が企画展に夢中になっている間、久我くんはむやみに近づいてこなかった。その上、時間も忘れて見入っている私をそっとしておいてくれた。
「ごめんなさい。時間忘れちゃって」
「いいよ。きらきら目を輝かせてる美咲も、かわいかったし」
臆面もなくそういうことをいってしまうところが、信用できないのだと思う。
私は聞かなかったことにして、ミュージアムショップに入った。久我くんにまじめにつきあっていたら、いくら心臓があったってもたない。
企画展用のグッズがずいぶん充実していて、それだけでまたテンションがあがってしまう。だけどこれ以上はしゃぐのも悪いだろうか。
「ゆっくり見たらいいよ」
私の逡巡を見透かしたように、久我くんが穏やかに微笑む。
この笑顔はずるいと思いながら、小さくお礼を言って店内を見回った。

