気取らないコンパクトカーに乗って、久我くんは車を走らせた。 久我くんの運転はスムーズで、安心して身を任せていられる。私が気を使うべきなのに、時折話しかけてくれる久我くんの声や、ボリュームを少ししぼったラジオの音が心地よくて、つい甘えてしまう。 地理に疎いからどこに行こうとしているのかわからないし、聞いてもはぐらかされてばかりだ。 聞き覚えのある地名をいくつも越えて、目的地で車が止まった。 「…なんで?」 思わず声がもれてしまったのは、私が行きたかったところだったからだ。