家庭科室の甘い味

「へっ?ないですけど?」


私は今まで料理やお菓子作りを、一人で作った事なんてない。


それに、今まで誰かの為になんて作ろうなんて思った事もない。


だから、


「先輩に作ったのが、初めてですよ?」


誰かの為に作りたいって気持ちになったのは、長谷部先輩だけ。


チラッと長谷部先輩を見ると……


赤くなってる?


長谷部先輩は顔を背けていて、耳元しか見えなかったけど。


その耳は、すごく赤くなっている。


私はなんだか嬉しくなって


「先輩、顔、赤いですよ?」


と、長谷部先輩の顔を覗き込んだ。