家庭科室の甘い味

「マジで?信じらんねぇ……」


私は聞き取れなかったけど、長谷部先輩は小さな声で何かを呟いていた。


「茜ちゃん……、本当に俺でいいの?」


「はい、先輩がいいんです」


私は真っ直ぐ長谷部先輩を見つめ、はっきりと答える。


「すげぇ、嬉しい」


そう言うと、長谷部先輩は私をぎゅっと抱きしめる。


そして、私の耳元で


「俺も……。俺も、茜ちゃんが料理部に入ってきた頃から、ずっと好きだったんだ」


そんな嬉しい言葉をくれる。


長谷部先輩は抱きしめる腕の力を緩め、私の身体を少し離し


「茜ちゃん、ずっと俺の側にいて」


「はい」


私は夢を見ているみたいだった。


「先輩……、夢じゃないですよね?」


だから、つい聞いてしまった。


「あぁ、夢じゃないよ」


私は嬉しくて、外だと言う事を忘れて、長谷部先輩の背中に腕をまわし、抱き着いた――…